大学におけるこれからの観光関連学部のあり方について
~12%という数字が物語るもの~
田原 洋樹
「12%」という数字、これは大学の観光関連学部を卒業した学生のうち、観光業界へ就職する確率です。(観光庁調べ)
観光業界への就職人気を背景に、全国の大学が観光関連学部を設置する動きが広まっている一方で、この「12%」という数字には多くの大学関係者を悩ませていることとお察しします。
この数字を受けて、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授の高橋俊介氏は著書「21世紀のキャリア論」の中で、観光系学部における教育の在り方を見直すべきであるとの持論を展開されています。
私も全くの同感です。目まぐるしく環境変化が巻き起こる観光業界において、観光人材教育の在り方も見直しを図るタイミングに差し掛かっていると言えるのではないでしょうか。
さらに考えたいのは、12%の学生が観光業界に足を踏み入れて、その後、満足いくキャリアを歩んでいるか?ということです。
残念ながら、小職がJTBという大手旅行会社において、現場で見てきた多くの人材の中で大学、あるいは専門学校で「観光」を専門に学んできた学生が際立てて優秀あるいは成果を上げているということは見受けられませんでした。
それどころか、知識や理論ばかりが、インプットされた状態(言わば頭でっかち)で入社するため、旅行企画という柔軟な発想や、無形の商品・サービスを提供する上で、肝心の顧客が何を求めているかというニーズのヒアリング能力という基本的なビジネススキルがなかなか育たないといった状況を目の当たりにしてきました。
やがて彼らは、入社前に抱いた観光業界の「理想」と「現実」の狭間で苦しみ、自ら社を出て行くとう最悪の事態に至るのです。
自身の先輩たちが、観光業界に進んで、このようなキャリアを歩んでいる現状をOB訪問やインターンシップなどで垣間見て、在学生は「観光業界へ進むことを断念する」、正に負のスパイラルの状況が12%という数字を作っているのだと考えます。
少子化が進み、大学全入時代に突入した今、各大学の、また観光系学部の生き残りをかけて、私はこの12%という数字を重く受け止めなければならないと感じています。
では具体的に何をするべきか?
次回はその具体策について考えていきたいと思います。